【早川城主】
早川近江守秀村、同式部少輔正秀（後剃髪して離風と称す矢部猿渡を賜る）
初め秀村阿蘇家に仕へ當城に居り正秀に至り阿蘇大宮司惟豊に仕へて矢部荘猿渡村を賜り築き隠寓所とし古蘇武良城と云う。（永生年中）後剃髪して離風と号し、秀邦に譲り之れに移り佐渡と称す。（猿渡城参看）子吉秀、妻に甲斐宗運の二女、後剃髪して休雲と云う。天正８年隈庄城主甲斐守昌叛くに及び阿蘇大宮司惟将、甲斐宗運に命じ討たしむ。宗運往て圍むこと数月城固くして容易に降らざりしを以て更に吉秀及伊津野山城守を遺し宗運と力を戮せて之を攻む、守昌爰に於て宇土に援を乞ふ、宇土顕考精騎を出し隈庄を救ふ、三月十日吉秀援兵の将本郷と引組舞の原に討死す。次秀家及び二男秀貞共に大宮司惟種に仕えて在城す。家士に佐渡大学、同圍書、同能登、同修理等名あり、其の後阿蘇衰廃して秀家も退城し、天正１５年秀吉公征西佐々成政領國するや、成政に仕へ、佐々滅ぶや浪して京都に赴き帰って清正公に仕へ三百石を賜ふ。